戦国の悪人の内面に迫る「宇喜多の捨て嫁」

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宇喜多直家は岡山の戦国武将ですが、どちらかと言えばマイナーな武将です。
その実像は、娘の嫁ぎ先を滅ぼし、その娘を自殺させることが何度もあるなど、悪逆非道な人物として知られています。

 木下昌輝さんの「宇喜多の捨て嫁」は作者のデビュー作ですが、直木賞にもノミネートされた作品で、その宇喜多直家の内面に迫る内容となっています。
全六編の短編集ですが、それぞれの話は関連性があり、最後には意外な結末が用意されています。
全編に漂うのは、直家の「尻はす」と言われる奇病から出る腐臭と、彼に翻弄される人物たちです。
元々は有能な武将であった直家がどのようにして謀略を駆使して成り上がっていくかが娘や婿、主君などから目線を次々と変え、描かれていきます。そこで浮かび上がってくるのは、幼少時のトラウマと母との関係です。この母との関係と悲劇が人生に影を落としています。

 面白いのは、直家の持つ「無想の抜刀術」と言われる技です。自分に危害を加ええようとする人を無意識のうちに切りつける必殺剣で、それが彼を助けまた、窮地に陥れます。
この技を発動するときの直家とその周辺の緊迫感はとても息苦しく、登場人物の戸惑いや苦悩が伝わってくるようでした。

 どのような人物にも秘密があり、それを人生にどのように生かしていくか考えられる一冊です。
ちなみに「高校生直木賞」の受賞作でもあり、これを読んだ高校生たちがどのような人生を歩むのか楽しみです。