「BLACK OUT」~私を20年魅了する1冊~

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「BLACK OUT」(渡辺浩弐著・幻冬舎文庫)は、22年前に放映されていた深夜ドラマのノベライズです。科学捜査部の職員が、ハイテク犯罪を捜査するという、SFミステリーです。当時私は、受験勉強しつつもドラマにハマり、小説版にも手を出しました。「若い頃の思い出の本」を、昨年たまたま読み返してみたところ、気付けばクライマックスでボロ泣きしていました。この本の、何が私の心に触れたのでしょうか。

 「BLACK OUT」のいちばんの魅力は、SFとしての先見性だと思います。1995年に1999年を想定して書かれたものですが、遺伝子技術や放射線の問題など、現在でも扱われているテーマが取り上げられています。特に最終話は東日本大震災での放射能問題と通じる部分があり、改めて驚愕しました。

 本書で扱われる事件は、当時の先端技術を駆使したものです。しかし事件に至る「人間的な過程」も描かれており、そこがミステリーとしての幅を出していると思います。

 そして私がいちばん心を動かされたのは、学生時代気付かなかった恋愛小説としての側面です。具体的な行為は一切描かれませんが、事件の度に心を通わせていく2人の姿に、もどかしくもキュンとします。そして最終話での号泣です。切ない余韻を残すラストにも、科学技術について考えさせられるものがあります。

 「BLACK OUT」は、SF・ホラー・ミステリー・恋愛とたくさんの要素が詰まっていながら、科学技術の発展がもたらす不穏な面にも触れています。発行から20年近く経つのに新鮮な驚きを感じられるのは、この部分にあると思います。現代のテクノロジーと照らし合わせながら、読んでみてほしい1冊です。